自己評価の低さは能力でカバー!『無自覚な天才少女は気付かない』

自己評価の低さは能力でカバー!『無自覚な天才少女は気付かない』

氷雨
氷雨

こんにちは、女性向けなろうコミックをレビューしている氷雨と申します。

今回紹介する作品はこちら!『無自覚な天才少女は気付かない』です。

自分の才能があらゆる分野で飛びぬけている少女と手を差し伸べる冒険者との関係がどのように進むのか。そして、その才能はどう開花していくのかを読み進めるのがとても楽しい作品です。

では、まずはあらすじからまいりましょう。

あらすじ

各分野のエキスパートである両親と兄姉5人を持つリリアーヌ・アジェットは幼いころから家族から最高水準の教育を受け続け、15歳になった今ではあらゆる分野で天才と呼ばれている。

しかし家族が全員「この子はこんなに可愛い上に素晴らしい才能もあるのだから、自分くらいは心を鬼にして厳しいことを言わないとわがままに育ってしまうだろう」とそれぞれ思っていたせいで、一度も褒められた事がなかった。

ある日突然遠縁の少女、ニナが事情があって義妹となったのだが、いくら頑張っても自分を認めてくれなかった家族が全員ニナには惜しみなく褒め言葉をかける様子を見て絶望したリリアーヌは書置きを残して姿を消した。

今までないがしろにされ、どれだけ努力を重ねてきたとしても認められなかった主人公が自分の幸せはどこにあるのかを探しに行く物語です。

天才だからこそ周りはさらに上を求める

あらゆる分野で最高の技術を求められる公爵令嬢のリリアーヌは、幼いころから最高の教育を受け続けてきたサラブレッドです。その甲斐あって、15歳のころには天才と呼ばれるほどの優等生に成長しました。

その本人が欲しかった言葉は、ただ1つ。「よく頑張ったね」という言葉だけというとても細やかな願いです。

しかし、この主人公の兄弟や両親は一切本人を褒めることはなく、むしろまだ「努力が足りない」と追い込むことが基本です。

頑張っている人はとても素敵だと思いますし、その原動力になるのは「褒められる成功体験」だと私は思います。

せっかく頑張っているのになかなか認めてもらえてないのはとてもさみしいことだと思うからこそ、リリアーヌの気持ちは痛いほどわかりますし、寄り添ってあげたくなるのです。

しかし、家族に認められずいくら努力しても足りないといわれるのはキツく、しかも主人公の知らない場所で自分が褒められていたと後から気づくのは苦しくなってしまいます。

今まで頑張っていたことを認めていたにもかかわらず、その内容を外にだけ発信し本人には伝えず変な気遣いによって家族全員から冷酷に接され、逃げ出すのでした。

そりゃそうですよねぇ……誰にも認められずにずっと続けられるほど人間の心は強くありません。ましてやまだ15歳なのですから。

氷雨
氷雨

私も、子どもに接するときには気を付けないといけないですね。頑張りっていうのは、認められて褒められるからこそ頑張れるんだって思うので。

その地位は遠縁のものに……

自分が褒められないのは自分のせいだと考えつつまだ努力を続ける主人公の元に、遠縁の少女が引き取られてきます。その子の名前はニナ。その女の子はリリアーヌの使えない光魔法が使える人物であり、家族からも重宝されます。

その扱いの差に心がぐらぐらと揺れる感覚を味わうリリアーヌ。その気持ち、すごいわかります。今まで褒められたことがない自分なのにも関わらず、目の前で最近来たばかりであまり頭の良い行動をしない子が褒められている。

しかも、ニナのせいで凶暴な魔獣に襲われた事件があっても、その犯人はリリアーヌになっているという。正直、ここが一番腹が立ちましたね。

その表情は本当に良い悪役の顔しているんですよねぇ。いやぁ、漫画家さんの技量が高いのがよくわかります。だからこそ、登場人物たちの心情もとてもしっかり伝わってきます。

自分の言葉をもう受け止めてもらえないと感じたからこそ、リリアーヌは家を飛び出し消息を絶ちます。突然のことに家族も探すために力を尽くしますが、できるだけ自分の痕跡をたどらせないようにと動くリリアーヌは本当に天才であり、用意周到だなと感じますよ。

自分の居場所はここではないと自覚したからこその行動力はとても強く、見ていて応援したくなる人物だといえます。

あと、やっぱり褒められるのは嬉しいし力になるからこそ、リリアーヌを認めてくれる存在は大切にしたいなと思わせる物語ですね。

寄り添ってくれる人の大切さ

家出をしたリリアーヌは偽名を使いながら身分を隠して冒険者として活動を始めますが、今まで培ってきた能力が一気に開花することになります。しかし、自分の自己評価が低いからこそ、なろう作品おなじみの「私、何かしてしまったでしょうか?」が発動します。

これは、完全に家族の接し方のせいですね。こんなに自分を責めるような考え方をするようになってしまったからこそ、自分の能力が低くやり方を間違えたのだと自責の念を抱える場面が多くなるんです。

見ていると、少し苦しくはなりますが、同時にその能力をきちんと認めてくれる人との出会いも待っています。それは、同じ冒険者のフレドです。彼にも秘密がありそうではありますが、まだそれは明かされていません。

片目を髪の毛で隠しているメカクレ属性を持っている男性で、イケメンですよ。しかも何やらリリアーヌ改めリアナとの恋愛もありそうな香りが……。

このまま、恋愛要素も取り込みつつまっすぐ進んでもらえたら嬉しいなと思います。それに、リアナの専属メイドだったアンナも合流できたことで、心身ともに安堵する場面も生まれます。

ようやく、ずっと一緒にいた親友との再会にリアナも涙を流しながら喜ぶ姿を見て、本当にうれしくなってしまいました。

氷雨
氷雨

良かったねぇと親戚のおばさんのような視点になってしまいましたよ……あはは。

しかも、リアナが悲しい思いをしていた原因である家族に対しての報復に、政敵である伯爵家を利用しようとするんだから……もう、フレドも容赦ないですね。

自分を認め、包み込んでくれる人との関係はリアナ自身も大切に思っているからこそ、頑張ろうとしてくれるのです。その関係はとても心休まるものであり、リアナも少しずつ明るさを取り戻していきます。

おわりに

やはり、自己評価の低さというのは直すためになかなか時間がかかってしまうものですね。ましてや、リアナのように何でもできる子だと特に。時間はかかりましたが、自分を認めてくれる存在を家族以外の中から見つけられたからこそ、リアナも安心できるでしょう。

それに、なにやらロマンスの気配もまだ残っていますし、この先が気になるところです。現在は2巻まで発売されていて、続刊は秋ごろに発売予定とのことです。

この先を楽しみにしながら待ちたいと思います。

氷雨
氷雨

それでは、今回はここまでです。また次の作品でお会いしましょう。