子どものために権力に立ち向かう強い女性の姿『うっかり陛下の子を妊娠してしまいました~王妃ベルタの肖像~』

子どものために権力に立ち向かう強い女性の姿『うっかり陛下の子を妊娠してしまいました~王妃ベルタの肖像~』

氷雨
氷雨

こんにちは、女性向けなろうコミックをレビューしている氷雨と申します。

今回ご紹介する作品は、こちら!

『うっかり陛下の子を妊娠してしまいました~王妃ベルタの肖像~』になります。

今回の作品は、後宮ものであり、周りのしがらみがある中で子供を守ろうと行動する女性の強さを見せてくれる作品です。まずは、あらすじからまいりましょう。

あらすじ

ベルタの嫁入りが決まった。国王のもとへ、二番目の妃として。

血統至上主義の現王室は数世代に渡る血族結婚を繰り返し、その血脈を痩せ細らせていた。血筋のみを重要視した悪政が続き、国力は低下するばかり。

斜陽にある王家が取った苦肉の策は、これまで被支配階級であった辺境の民族から妻を娶り、国内勢力と融和すること。白羽の矢が立てられたのが、辺境領主の中では最大派閥と噂されるカシャの嫡女ベルタだった。

夫に愛されるわけもなく、正妃とは政治的に対立することを余儀なくされるハードモードな新婚生活。ベルタは受難の予想される日々を耐え抜いて、役目を終えた妃として市井に下賜される日を待ちわびることにした。

しかし、ベルタの結婚当初の計画は、すべての関係各所にとって予想外の事態によって潰えてしまう。ベルタは嫁いで早々の三夜の儀式で、国王の子を身ごもってしまったのだった。

南部の女性と北方の王との政略結婚の中で、生まれた子供のために行動する主人公の行動を主に見ていくことになります。

後宮でのベルタの立場と派閥

この主人公のベルタはずっと結婚せずに王の一族として生きていた女性で、年齢的にも40歳近くと描写があり、本人も始めは乗り気ではないのです。

しかし、政略的な意図があるのを父である王から聞いて、しっかりと帰って来てからの相続の話をするなど強かで大胆な女性になります。そのため、読んでいてとてもスカッとしますし、とても情に厚い人であることもわかるのです。

だからこそ、嫁ぎ先の王であるハロルドの対応にいら立ちを覚えるのでしょう。お互いに30歳越えの結婚に、自分の正室である従姉妹の「マルグリット」との関係にもうだつが上がらない様子に、本当にやきもきさせられます。

従姉妹というと、結構血が近い存在であるからこそ、もし身ごもったとしても体が弱く亡くなってしまうことが多いのです。そのため、なかなか世継ぎが生まれずもどかしい想いをしているのでしょう。

また、マルグリットも自分の王族としての血を彼との子供に流すことで、愛人の子供というハロルドのことを世間に許してほしいと考えているのです。その考え自体がとても古く、ハロルドの気持ちを一切考えていない言葉だと思います。

ハロルド自体、確かに負い目に感じている部分はあるでしょう。しかし、それを自分の血の力が偉大だと思い込んで、彼を許すなどと上から目線でものを申しているように感じるのです。

氷雨
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ですから、個人的にマルグリットはとても苦手な女性に感じるんですよねぇ。

まぁ、貴族としての誇りなんてものは、その辺の犬にでも食わせておけば良いんです。実際、後宮の中で強いのは子どもが生まれた人になりますし……。とまぁ、私もそう思っていた時期がありました。

しかし、この作品を読んでいて確かにと思う点がちらほら。やはり、側室が力を持つことによって、自分の立場が危うくなると周りが動き出してしまうというものです。そのため、後宮内では派閥ができてしまい、対立構造が生まれてしまいます。

混血の子供が生まれた後のドタバタ

たった3回、夜を共にしただけでその後会いに来ることもなかったハロルドとの子供を身ごもっているといわれ、さすがのベルタも驚いてしまうのです。そりゃそうですよね、本当に義務感だけで通っていた相手の子供を身ごもってしまうなんて普通は思いませんし。

しかし、事実だからこそ、その後のためにと行動する姿はとても好感が持てる部分です。王家の血が混じっていない子どもだからこそ、大きくなる中で味方になれるような人を増やすために動き出します。

その姿はまさしく母親であり、生まれてくる子どもへの愛情がとても深いのもわかるので、強く共感してしまいます。自分も1人子どもがいるからこそ、その子のためにと自然に体が動くのはその通りだと思いますから。

そして、出産した子どもはベルタの血を受け継ぐ黒髪の男の子でした。出産して取り上げてもらった時のあの感動は、私も忘れることはありません。真っ赤な自分の子の顔が見えて、大きな声で泣いている姿は言葉では表せない感情に包まれて、こちらまで涙がこぼれてくるのですから。

その子どもの瞳は、ハロルドに似て青い瞳。その様子に自然と笑顔が浮かびますが、この後、正室のマルグリットに子どもを渡せと女中からベルタへ進言してくるのです。確かに立場を考えればその言葉に従うのは道理ですが、自分の腹を痛めて産んだ子を他の女性には渡せません。

マルグリットに子どもを渡すよう促すハロルドの鈍感さにはさすがの私もイライラしてしまいましたが、彼の中でマルグリットの存在が特別だと考えているのなら、その行動も分からないでもないです。

氷雨
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ただ、理解できるだけで共感はまったくありませんけれども。

父親としての面と王としての面

ベルタの産んだ子どもはルイと名付けられすくすくと成長していきます。その中で、子供を連れて、南部の方への視察を行うことが決まり始めていたのです。元々南方の出であるベルタを連れて行けば、円滑に物事が進むとの考えの元のアイデアになります。

しかし、まだ子どもの年齢も1歳になったばかり、この頃の子どもは本当に体調を崩しやすくすぐに風邪を引いてしまうのです。そのことをよく理解しているからこそ、その遠征に対し必要な人材やものを提案できるのは、やはり母親だからこそでしょう。

しっかりと準備をしてからの旅をする中で、少しずつハロルドもベルタを自分の妻であること、そしてルイを愛していくことを考えていくようになります。その姿勢は、少しずつ父親になっていく男性のようにも見えますが、普通はここまで正直になれないのではと感じるんですよね。

この視察の時間の中から、ベルタとハロルドの距離が次第に縮まっていきます。それは、お互いをきちんと見るように意識を持つようになるということ。だからこそ、以前よりもハロルドはベルタの話を聞きようになりますし、思いやりを向けてくれるようになるのです。

ここから、家族として少しずつ形になり始めますし、子どもを大事にする中で自分の気持ちを言葉にできるようになります。

後宮という女同士の戦いに身を置くからこそ、きちんと周りとの関係に気を配れるベルタはやはり優秀な女性だと言えるでしょう。

氷雨
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男性に対しても物怖じせずに話ができるのは、私から見ても尊敬する部分ですね。

終わりに

子どもに対してもとても愛情を深く注いでいるのが分かるので、とてもほっこりとした気分になれます。もし、少し落ち込んでしまった時や、周りの関係に対し疲れてしまった場合はこの作品を手に取ってみてください。

全2巻の作品で読みやすいと思いますので、時間が空いたら読んでみるのも良いと思います。

また、これは子どもを持つ女性にもぜひおすすめしたい作品です。自分も親だからこそ、このベルタの立場になって考えることもできますし、子育ての大変さも実感できると思います。

氷雨
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それでは、今日はここまで。また、次の作品でお会いしましょう!