ゼロからのスタートでもしっかりと歩いていける「家政魔導士の異世界生活~冒険中の家政婦業承ります!~」

ゼロからのスタートでもしっかりと歩いていける「家政魔導士の異世界生活~冒険中の家政婦業承ります!~」

氷雨
氷雨

こんにちは、女性向けなろうコミックをレビューしている氷雨と申します。

今回取り扱う作品は、こちら!『家政魔導士の異世界生活~冒険中の家政婦業承ります!~』です。

始めの視点は主人公のお相手役であるアレクから始まりますが、主人公のシオリの魔法やその知識等に触れながら、彼女が異世界転移をしてきた人間だと理解する流れになっています。

前置きはこのくらいにして、あらすじと参りましょう。

あらすじ

A級冒険者のアレクは長旅から帰還し、久々に古巣のギルドを訪ねた。ちょっと挨拶するだけのつもりが、面倒な依頼とともに家政魔導士という謎の肩書を名乗る黒髪の女を押し付けられて困惑。

しかしシオリというその女は奇抜な魔法の使い方で、温かい風呂に旨い飯、寝心地の良い寝床と、野営にあるまじき快適過ぎる環境を提供し、アレクら仲間達はがっつりとその心を鷲掴みにされることになる。

すっかりシオリに惚れ込んだアレクは、日々を生き抜くことに必死な彼女を口説き落とせるのか。

主人公の魔術は仲間の強さのバロメーター

普通の日常を送ってきた主人公のシオリは仕事帰りの時にめまいを起こしてしまいます。そこから、倒れそうになった途端そのまま異世界へと転移してしまうのです。

言葉も何も通じない場所だからこそ、居場所を作るために生きるために必死に色々な魔法を覚えるシオリの健気さに胸がキュッと締め付けられるような感覚になりました。

自分の魔力量が少ない中で編み出した食事や選択などの家事は、ギルドなどの遠征で仲間たちのモチベーションにもつながるのです。

氷雨
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魔物や獣を狩って泥だらけになったところに待っている温泉……想像しただけで最高じゃないですか?

また、体を清めてから待っている食事に心地よい寝床。旅のなかではどうしても我慢しなければいけないものが全部そろっていると考えると、シオリの存在の大きさは言い表せないと感じます。

また、アレクもそのシオリの魔法に触れるほどにドキドキしてしまい、この世界の中ではなかなか見ない東洋系の顔立ちに興味を惹かれるのです。そして、もっと彼女を知りたいと願うことが多くなります。

しかし、シオリには周りには言えない深く暗い心の傷を負っているのです。それは、まだこの世界に来たばかりの時、周りの皆のために働けるのを楽しいと感じていたシオリは固定のパーティに誘われます。

始めはその魔法の奇抜さや万能感から重宝されますが、次第にその特別感に慣れた仲間たちはシオリをないがしろにしていくのです。そして、もともとの魔力が少ないのも相まって体調を崩し、ダンジョンの中で倒れたところをそのまま置き去りにされてしまいます。

この時のパーティは『暁』という集団だったのですが、まさかのギルド長と通じていて罰則なし!…

氷雨
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…正直、はらわたが煮えくり返りそうになりました。お前ら、家事をなめてんじゃねーぞ、と。

家の仕事がどれだけ大変で気を遣うものなのかわかっていないと感じたので、ついつい読んでいて眉間にシワが寄っていましたね……あはは。入り込みすぎも良くないな。

しかし、その心の傷にそっと触れて癒してくれるのが、長旅から帰還したアレクなのです。シオリの気持ちに寄り添い、時には強引に手を引いたり、場合によっては触れずに見守ったりと心強い存在として描かれています。

シオリのそばに寄り添ってくれるアレクの存在

アレクがまた良い男なんですよ……。長年冒険者をしているからこそ、きちんと仲間たちのことを見ていてくれるので、安心感を持って進めるのです。また、シオリの少し影のある雰囲気に自分と似ている部分があると重ね、きちんと気持ちを吐き出すように促してくれる。

そんな心づかいができる男性って、とても魅力的だと私は思います。……こんな人が旦那さんになってくれたら、なんて妄想もはかどりますね!彼氏でもOK!

氷雨
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あ、でも娘が連れてきたら少し裏を考えてしまうかも……。

優しいだけだと、やはり何か胡散臭いじゃないですか。どこかダメな部分とかがしっかりと見えてくると、安心感があるというか。ちなみに、アレクもシオリに性質が近いのか、無理をしがちな面を持っています。

なので、この作品中で一度ぶっ倒れてしまうのです。熱があるにも関わらず、何でもないの一点張りで結局シオリに見つかり看病してもらうというイベントも起こります。その際、シオリに場所を与えてくれている現在のギルド長であるザックも駆けつけてくれるという。

そのザックも、また良い男なのですよ。長髪を軽く首の後ろでまとめて、頬にキズのあるワイルドな男性です。しかもシオリの兄として行動してくれるという……あぁ、シオリちゃん。できればそこを代わってほしいと願うことも多々ありました。

でも、それはそれ。やはり作品として面白いのは、主人公がシオリだからなのです。だからこそ、これだけまとまっているし、アレクたちも惹かれていきます。なかなか言い出せない人もいるようですが。

自分の居場所がないからこそ優しさに胸が締め付けられる

ちなみに、この主人公の年齢は30歳前半と設定されていて、他の作品よりもだいぶ年上になっています。だからなのか、とても落ち着いた雰囲気を持っていて、芯の強い印象を周りに与えているのです。

年を重ねているからこそ、転移したての時も言葉が通じない中で生きるために行動できる強さを持っていました。その胆力はやはり長年仕事をしていて1人で暮らしていたからこそ、持っているものなのかもしれません。

しかし、だからと言って傷つかないわけではないところもまた好感が持てる部分ですね。

何をされたとしても基本的には穏便に済ませようとするけれど、自分の気持ちをしっかりと表現できるのは、素敵な一面だと私は思います。

また、この作品の登場人物は基本的に30歳オーバーなので、とても大人な対応をしてくれるのです。同時に、大人だからこそ、腫れ物に扱うような触れ方をしてしまう部分もありますがそこはアレクがカバーしてくれています。

自分の存在に対し自信が持てないシオリと心から信頼できる人を探しているアレク。この2人の関係はぎこちないけれど、とても温かい関係だと思います。だからこそ、アレクの優しさがシオリの心にしみて距離が縮まっていくのです。

終わりに

もし、日々の中で疲れてしまったなと感じたり、頼り方を忘れてしまったりした人はぜひこの作品を手に取ってみてください。アレクの優しさに自然と笑顔になれると思いますし、シオリの心が少しずつ解けていく様子は、安心感を与えてくれますよ。

氷雨
氷雨

それでは、今回はここまで。また、次の作品でお会いしましょう。